「根源からお金を問う」連載第2回
「お金」より、半歩先にあるものとは?
≪記事から抜粋≫
バブルの最中に消費者金融から撤退する。平成9年、消費者金融時代の決算のつもりで『金と共に去りぬ』(映像舎刊)をまとめる。
「いまも、迷うことなくお金は大好きです。でも、お金を貯めることが唯一の楽しみではないんです。50歳を過ぎて、お金の半歩先にある大切なものにはっきりと気づいてきました。今後は、利益が取れて充実感の持てる事業をしたいですね」
音楽、映像事業との付き合いやリサイクル店の経営、有機農法を取り入れた幼稚園への出資など、信頼関係に基づいたパートナーシップの仕事への興味も尽きない毎日だ。
そしてそんな世界からの刺激を楽しんでもいるようだ。『金と共に去りぬ』を読んだ出版社の協力を得て『借金中毒列島』(岩波書店)を出版した。
「せっかく、勝つか負けるかのお金の修羅場で真剣に戦ってきたのだから、その体験に基づいて、お金の怖さ、大切さを活字で訴えていきたいんです。とくに、貸し借りについては引き際の判断の大切さですね」
今年、親と子にお金の大切さについて伝えたくて『おかねの教育』(晶文社刊)を出版した。30年たってやっと、「森田君、僕も役に立つことをやったよ」と言える気がした。
いまも経営者として戦い続けている室井さんからのメッセージに耳を傾けよう。
「近ごろの経営者には、ビジネスには必ずリスクが伴うという覚悟が少ないと思います。精神的に逃げないことです。
必要なのは、どう解決するかということです。そのためにも、お金の半歩先にある大切なもの、一人ひとりの『愛と勇気』が大切だと思います。
自分自身、年齢とともに、人一倍旺盛だった燃えるような闘争心がなくなる日が来るかもしれません。私に闘争心がなくなったら、お金の貸し借りの世界から引退します。しかし、今は現役。明日も真剣勝負です。やります!(笑)」
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子どものころから持ち続ける「サムライ」への憧れが、室井さんの胸のなかで静かに燃えているようです。