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金融コンサルタント
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借金中毒列島

 
 
スポーツニッポン日掲載
2004-01-30
スポーツニッポン掲載記事

借金やめますか、それとも人間やめますか_

こんなちょっと過激な帯がついた「借金について考える本」がある。遊べ、遊べ、支払いは後!そう煽られて消費のためのクレジットカードやローンを重ね、多重債務者から自己破産へといたる現代人の金銭病理を解剖した『借金中毒列島ープロが語る消費者金融のウラオモテ』(岩波書店)がそれである。


金融コンサルタントとインタビューライターの怖くてためになる話

 

この本、金融コンサルタント・室井忠道とインタビューライター・岸本真の対話形式による共著。百戦錬磨の金融プロ室井氏に「失業中、某キャッシングを利用した」という岸本氏があれこれ尋ね、合いの手を入れながら、怖くてためになる話が展開される。

  室井氏は1960年代末に金融界に入り、数々の修羅場を踏み越え、狂乱のバブル期に踊らされることなく消費者金融業をクローズした経歴を持つ。金融業のかたわら月刊映画誌の出版や映画制作に携わり、有機農法園やレストラン経営、環境問題にも取り組んでいるという実に興味深い人物だ。
  そもそも室井氏がこの業界に入ったきっかけは、学生のときに「呼び屋」をやったこと。スタン・ゲッツやオスカー・ピーターソン、ヘレン・メリルらジャズ・ミュージシャンを呼んで興行に成功したが、大儲(もう)けを夢見て打ったピカソの陶器展が大コケ。会社は倒産。負債を抱えてプロの取り立て屋に責められるうちに、追われる方から追う方へ、取り立てられる方から取り立てる側へと、転身を決意した。
  それからというもの、銀座ホステスと契約しての"つけ"の取り立てから始まって、団地金融、サラリーマン金融へと室井氏は仕事を広げていく。ちなみに団地金融というのは、当時"団地族"といわれて羨(せん)望の的だった新興団地の主婦相手に「お金貸します」というチラシを配って、金を融資する商売。いまや上場した某大手サラリーマン金融も手を染めたという、まさに消費者金融黎(れい)明期のビジネスである。
  独立したての頃は金策に苦労した。銀座のママや知り合いの実業家、さらには有名相場師といった金利の高いスポンサー(金主)から金を借り、それを貸し付ける日々。やがて銀行が融資を申し出て、バブル直前には金余りで借り手を探していた銀行に、室井氏のほうから金利を決めて借りるまでになった。
  そうやってイケイケどんどん。融資を増やす一方できつい取り立てを繰り返す。サラ金こそ男の仕事、勝負の世界と思っているから、子供を泣かせ、死人を出し、心中や行方不明などが増えてもへっちゃら------のはずが、ある日、室井氏には「自分の仕事への疑問が生まれた」という。
  おりからバブル経済の真っ最中。人が人を信用して貸し付ける"人的担保"が有効だった時代は終わっていた。サラ金規制法、データバンクによるブラック情報の共有、貸し出し競争・・・。気がつけば安易な自己破産が増え、モラルの崩壊は進み、住宅ローンや銀行問題を抱える現代人の心はすっかり変わっていた。
  「あとがき」で室井氏は、身近なお金の話をつきつめていくと、人間の心理にいきつくと述べ「戦争の起きていない国に住み、自分の足でトイレに行けて、食事がおいしく食べられたらそれが最高の幸せ」と記す。その語り口にはいい意味でのケレンがある。
  今や仁義なき消費社会に生きる私たちにとって、皮肉にも金融業30年の現場からみた人間学は、どこか懐かしいヤクザ映画を見るような、スゴ味と情味が同居する世界になったというべきか。
 
久間十義(ひさま・じゅうぎ)小説家。1953年、北海道生まれ。90年「世紀末鯨鯨(げいげい)記」で三島賞。近著に警察小説「ダブルフェイス」短編集「オニビシ」がある。
 
 

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