「お金より半歩先にあるもの」とは?
--- バブルの最中に、消費者金融から撤退するとは、すごい決断でしたね。
室井 日本人の精神が軽くなった。お金より大切なものがあることを忘れて、お金だけが大事だと思い込んだんです。私は、これは違うな、と思ったんです。それで金融のグループからの脱退理由として貸す側にも、借りる側にもモラルがなくなったから、と書いたんです。
--- 何がきっかけでしょうか。
室井 自分のやっている貸し金の取り立ての現場で、待てよ、と思ったんです。とくに、子どもの悲しい姿を見るのはたまらない。お金で子どもが悲劇に陥るのはなんとかならないか。そんなことを考えて、あとで書いたのが『おかね教育』なんです。
--- そんな室井さんにとってお金とはなんでしょうか。
室井 はい、お金は時には人間の生き死にさえも決めてしまう。恐ろしいそれでいて、命の次に大切なものではないでしょうか。但し、扱いを間違えると手ひどい仕返しをうけますよ。
--- それで消費者金融時代のことを『金と共に去りぬ』にまとめられたんですね。
室井 そうなんです。私はつねにお金より半歩先にあるものを知ってほしいと思って書き始めたんですよ。
--- 半歩先にあるものとは、いったい何でしょうか?
室井 それは物事を判断する場合、愛と誇りを加味してお金の動きをみることです。そこにはバブル崩壊でお金と共に去っていった、お金より半歩先にあってお金より貴重なものがあるはずです。その価値は、それぞれの人によって異なるでしょうけど、必ず愛と誇りと気品が備わっているものだと私は信じています。
--- なるほど(ミヒャエル・エンデのメッセージに似ています)。
室井 ですから、お金の大切さと、半歩先にあってお金よりも貴重なものの両方を手放さなければ、心豊かに、力強く生き抜くことができるんじゃないですか。どうですか。そう思われませんか。